DOMAINE HENRI GOUGES ドメーヌ アンリ グージュ

地所:ブルゴーニュ地方 コート ド ニュイ地区 ニュイ サン ジョルジュ村

第一次世界大戦後、父親より9haの畑を譲り受けたアンリ グージュ氏は1925年にドメーヌを設立し、マルキ ダンジェルヴィル氏やアルマン ルソー氏らと共にその時代に蔓延していた粗悪なブルゴーニュワインを無くす為にINAOを設立し、区画やクラスを決める際、自分たちの畑があるニュイ サン ジョルジュとヴォルネーには自己贔屓をしないようにグラン クリュを設定しませんでした。アンリ氏の孫のピエール氏、クリスチャン氏がそれぞれ畑と醸造を担当してドメーヌを運営していましたが、両氏とも定年を迎えたため、現在はピエール氏の息子であるグレゴリー氏が中心となって、ニュイ サン ジョルジュのみ15haの畑でワイン造りを行っています。

昔からコート ドールの傾斜が急な畑では、雨が降った後に土が流れてしまうという問題がありました。これに対し、ピエール氏は1975年に葡萄の木の列の間に芝生を植える方法を生み出しました。これは降雨後の土地の侵食を防ぐだけでなく、雑草が生えるのを抑える働きもありました。また、丈の高い雑草が生えない為に畑の通気が良く、カビの発生を抑制する効果もありました。さらに、芝生があることで葡萄の根は横ではなく下に向かって伸びるため、地中深くの養分を吸収することができ、結果としてテロワールを明確に表現することができました。また、1990年代から徐々に畑をビオロジック(有機栽培)に変えていき、2008年から100%ビオロジックになりました。現在ではビオディナミに移行済みの畑もあります。

コンクリートタンクが並ぶ醸造所

テロワールとヴィンテージを尊重する為、毎年同じ仕事をします。畑仕事は天候状況や病害に対してそれぞれ適切な作業や処置を行いますがベースとなる仕事は毎年同じです。醸造、熟成は毎年同じ仕事をします。

畑で厳選して収穫された葡萄は2007年に新設された醸造所の2階にある選別台で厳しく選別、タンニンが出過ぎないように特殊な除梗機で破砕しないまま100%除梗され、地上階にある醗酵タンクへ重力によって運ばれます。1階で醸造後は地下で重力によって運び熟成させます。

これがグレゴリー氏が当主になってから導入したグラヴィティシステム。ポンプ等の機械を使わずに自然の力で果皮や種、果汁を運ぶ事でストレスを与えず、また傷付ける事もないので過度なタンニンの抽出を抑えます。

アルコール醗酵に使われるコンクリートタンクはアンリ グージュ氏の時代に造られた古いものが使われており、タンク上部が開いている開放桶ではないのでアルコール醗酵の際に発生するガス(二酸化炭素)がタンク内部に溜まりやすく、醗酵作用がゆっくりと進むので、じっくりと葡萄から色とアロマを引き出せます。

ルモンタージュ(液循環)には医療にも使われている機械を導入し、静かに行います。

白も赤も共にバトナージュ(攪拌)は行いません。

ピシャージュ(櫂入れ)は一日一回。タンク内に設置されている金網状等で皮を傷付けないように静かに行う。機械で行い、ガスによって押し上げられた果皮や種と果汁の接触を増やしてアロマやタンニンを引き出します。

その後、樫樽に移されマロラクティック醗酵をさせて18ヵ月間熟成されます。初代アンリ グージュ氏の頃から全てのキュヴェが100%樽熟成で新樽率は20%です。

とても綺麗な葡萄が取れるのでそのままでも十分透明感がある為、コラージュやフィルターは行わずに瓶詰めされます。

現当主(4代目):グレゴリー グージュ氏
2018年1月16日に奥様と一緒にご来店頂きました。

当主からのヴィンテージコメント
2015
畑には葡萄の木と競合させて樹勢を強くさせたり水分が行き過ぎないようにする目的で芝生を植えているが、2015年は雨が少なかったので貴重な水分を芝生に取られてしまった影響で葡萄の房数が少なく、さらに粒が小さい葡萄が多く収穫量は例年の50%ほどに減少してしまった。ただ、葡萄の健康状態は通常選別で20%ほど捨てているのに対し、2015年は3%くらいしか捨てる必要がなかったくらい良い状態だった。太陽いっぱいのタッチから力強い味わいでブルゴーニュらしくないが素晴らしい凝縮感がある。

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU  LES SAINT-GEORGES
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ レ サン ジョルジュ

品種:ピノ ノワール100%

INAO設立の経緯から特級区画が存在しないこのアペラシオンの中で最もそれに近い畑と言われている区画。合計7haの畑を13の生産者で分割しており、当ドメーヌはそのうちの1.1haを所有しています。2009年から現在この区画を所有する生産者で組合を作って特級区画に格上げさせるようにINAOに申請しています。

ヴォークランと隣接した畑。他の区画と比べてダントツに骨格がしっかりとしていてタンニンも強いのは石が多く、表土が浅く土が少ない為。傾斜がある為水捌けも良い畑です。複雑かつエレガント、ピュアな果実味と繊細も併せ持つ。このワインの真の姿を見るには少なくとも10年は寝かせる必要があります。

プルミエ クリュの法的最大収量は45hl/ha。ですが、グレゴリー氏はブルゴーニュでは40hl/ha以上で良いワインは造れないと言います。レ サン ジョルジュの過去最大の収量は2009年の26hl/ha

2015年生産本数は3252本

レ サン ジョルジュ(9月)

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU  LES VAUCRAINS
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ レ ヴォークラン

品種:ピノ ノワール100%

広さは約1ha、自然とあまり実が大きくならない区画で平均26hl/haしか収穫できません(法律の限度は45hl/ha)。樹齢60~80年の木が多く毎年少しずつ植え替えをしています。特級区画のないニュイ サン ジョルジュの中で最も特級に近いクオリティがあると言われている1級「レ サン ジョルジュ」とこの「レ ヴォークラン」を比較すると、「レ サン ジョルジュ」は開いている時期が長いので飲むタイミングを見つけやすく、あまりワインを知らない人でも飲みやすいのに対し、この「レ ヴォークラン」は飲むタイミングが難しく熟成させたい人向けで時間と説明が必要なワインになっています。

その理由としては急勾配と石の多さが挙げられます。

ヴォークランはコンブ(谷の出口みたいな地形)の南側に位置する畑でレ サン ジョルジュはその南東隣。共に石が多く土が少ない土壌だがヴォークランの方がより傾斜が急で表土が浅いです。ヴォークランの岩は元々海にあった岩が多くて、レ サン ジョルジュより大きい為、より堅固で晩熟タイプのワインになります。

2015年生産本数:3352本

レ ヴォークラン(9月)

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU LES PRULIERS
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ レ プリュリエ

品種:ピノ ノワール100%

畑の広さは約1.8haでニュイ サン ジョルジュ村のボーヌ側に位置し、標高の高い所の土壌は石灰質が多くミネラルが豊富で、低い所は粘土質が多く味わいに深みを与えます。また、樹齢15年の若木と最高で樹齢70年にもなる古木をアサンブラージュして造ることで新鮮さとミネラル、獣肉のような野性的な果実味と凝縮感を表現しています。当ドメーヌが単独所有する1級区画「クロ デ ポレ サン ジョルジュ」と標高や樹齢などの条件は同じですが、テロワールの影響から全く違う味わいになります。

共に泥灰土ですが、プリュリエが平地の畑に対し、クロ デ ポレは斜面に面した畑。またクロ デ ポレの方がペリエール(小石)が多いです。(一級区画ラ ペリエールはクロ デ ポレの西隣)。

その為、プリュリエの方が肉厚で果実味が感じやすいワインになります。

レ プリュリエ(9月)

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU CLOS DES PORRETS SAINT-GEORGES
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ クロ デ ポレ サン ジョルジュ

品種:ピノ ノワール100%

畑の広さは約3.5haで南側(ボーヌ側)に位置し、粘土の層が厚いリッチな土壌で東向きの日当たりが良い場所にあります。区画名は「Les Poirets(レ ポワレ)」ですが、詳しくは「Porrets Saint-Georges(ポレ サン ジョルジュ)」と「Clos des Porrets Saint-Georges(クロ デ ポレ サン ジョルジュ)」に分類され、「Clos des Porrets Saint-Georges」を単独所有しているこのドメーヌでは詳しい畑名を採用し、このように名付けています。

プリュリエと標高や樹齢などの条件は同じですが、テロワールの影響から全く違う味わいになります。

共に泥灰土ですが、プリュリエが平地の畑に対し、クロ デ ポレは斜面に面した畑。またクロ デ ポレの方がペリエール(小石)が多いです。(一級区画ラ ペリエールはクロ デ ポレの西隣)。

その為、骨格が太く、凝縮感がありミネラルも豊富でしっかりとした味わいです。

グレゴリー氏が好きな畑。素直でダイレクト、タンニンが溶け合いアグレッシブでないニュイ サン ジョルジュらしい代表的な畑です。

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU  LES CHENES CARTEAUX
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ レ シェヌ カルトー

品種:ピノ ノワール100%

畑の広さは約1ha、ニュイ サン ジョルジュ村の最南端にあり、約半世紀前に葡萄が植えられました。丘の上の森に隣接した急傾斜の畑で地表に小砂利が散らばっている粒の細かい粘土質土壌です。コート ドールでは希少な砂質土壌でもあります。

ニュイ サン ジョルジュらしいストラクチャーと力強さもありますが、果実味がとてもエレガントで1級の中ではバランスが整いやすいワイン。隣接する1級畑「レ サンジョルジュ」や「レ ヴォークラン」よりも早くから楽しめるようになります。

NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU LES CHAIGNOTS
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ レ シェニョ

品種:ピノ ノワール100%

葡萄の木の樹齢は約30年で畑の広さは約0.5ha。ドメーヌ創設者のアンリ氏は「真のニュイ サン ジョルジュのワインはストラクチャーと集中、力強さがある南側のワイン」という信念を持っていたので、その時代に所有畑のほとんどを購入した当ドメーヌは南側に畑が集中しており、この区画が唯一村の北側にある畑になります。ヴォーヌ ロマネに近いこともあってそのテロワールも反映され、ニュイ サン ジョルジュとしては繊細で口当たりも柔らかく、エレガントで女性的な味わいになりやすい傾向があります。

NUITS-SAINT-GEORGES
ニュイ サン ジョルジュ

品種:ピノ ノワール100%

ピノ ノワール種100%。所有畑の総面積は約4haで南側の「Belle Croix(ベル クロワ)」「Les Fleurières(レ フルリエール)」「Les Brûlées(レ ブリュレ)」「Les Chaliots(レ シャリオ)」等、1級に隣接する数区画の葡萄を最初からアサンブラージュして造られます。1級には及ばないものの、果実味と酸味が豊かでタンニンもしっかりしており、余韻と味わいの強さがある典型的なニュイ サン ジョルジュのワインです。

 BOURGOGNE ROUGE
ブルゴーニュ ルージュ

品種:ピノ ノワール100%

ニュイ サン ジョルジュの町の南側、国道74号線を挟んでクロ デ ポレの真東の平地にある、広さ約0.2haの石灰質土壌の区画「Le Petit Chaliot(ル プティ シャリオ)」と丘の麓にある、広さ約0.8haの粘土石灰質土壌の区画「Les Dames Huguettes(レ ダム ユゲット)」の葡萄をアサンブラージュして造られます。果実味、酸、タンニンのバランスがとれていて長熟にも耐えられる力を持っています。

 NUITS-SAINT-GEORGES 1ER CRU  LA PERRIÈRE
ニュイ サン ジョルジュ プルミエ クリュ ラ ペリエール

品種:ピノ ブラン100%

1級区画「クロ デ ポレ サン ジョルジュ」に植えられていたピノ ノワールが突然変異したもので、ドメーヌ創始者のアンリ グージュ氏が発見したのでドメーヌでは「ピノ グージュ」と呼ばれています。畑の広さは0.4haほどありますが腐敗が起きやすい区画で平均収量は20hl/haほど。元々は石切り場だった場所で多くの石を含む石灰質土壌になっています。ステンレスタンクで醗酵させ、新樽30%で約12ヵ月熟成、コラージュはせず瓶詰前に軽くフィルターを掛けます。ミネラル豊かで透明感があり、とても複雑な味わいがあるワインです。

BOURGOGNE PINOT BLANC
ブルゴーニュ ピノ ブラン

品種:ピノ ブラン100%

上記「ペリエール」の葡萄から選りすぐられたものを挿し木して植えられており、樹齢は約30年になります。オート コート ド ニュイに近い丘の頂上付近の標高370mの場所に畑があり、土壌は小石混じりの少し深い粘土石灰質になっています。ステンレスタンクで醸造、前年に上記「ペリエール」の熟成に使用した新樽を翌年に1年樽として使用し、約6ヶ月間熟成させます。タッチは力強く引き締まりがありますが、アロマ豊かでアフターに旨味が広がる真っ直ぐなわかりやすいキャラクターのワインになっています。口当たりはアルザスのようで、アフターはブルゴーニュ。まさにブルゴーニュのピノ ブランです。