DOMAINE DES AMOURIERS ドメーヌ デ ザムリエ

地所:コート デュ ローヌ地方 サリアン村
ビオロジック

ドメーヌ名にもなっているAMOURIERS(アムリエ)とは昔の言い方で桑の木を意味し、ドメーヌの前に広がる葡萄畑と共に植わっている1本の大きなアムリエは凄く印象的です。

コート デュ ローヌ地方、ヴォークリューズ県のサリアン村とヴァケラス村の境界線に位置するこのドメーヌは、1928年に最初の葡萄の木が植えられたところから始まりました。ポーランドから移住してきた農業技師であり醸造学者でもあったオーナーのジョスラン シュツィクイェヴィッツ氏は伝統を重視したワイン造りを営んでいましたが、1997年に交通事故で惜しくも他界され、ジョスラン氏の右腕として1991年から働いていたパトリック グラ氏が生産、販売を引き継ぐことになりました。2008年には醸造学校を経て南アフリカやオーストラリアで修業を積んだジョスラン氏の息子であるイゴール氏がドメーヌに参入し、現在は新たな当主としてパトリック氏と共に葡萄栽培及びワイン造りに励んでいます。

当主:イゴール シュツィクイェヴィッツ氏

所有する22haの畑は小石や砂利がたくさん混ざる粘土石灰質が中心。盆地状の地形なので日差しが非常に強く南仏特有のミストラルという北風が強く吹くので非常に乾燥し、小石が太陽熱を蓄えて放熱するので葡萄は豊かな風味を得ることができます。ミストラルは風速50~60m/秒吹く事もあり、当ドメーヌの畑もラヤス同様防風林に囲まれています。

グルナッシュの木はゴブレ方式、シラーはコルドン ロワイヤル方式で仕立てられ、樹間を約1m、1株当たり房数を4~7房に制限することで空気の循環を良好にし、病害から守るとともに収量を抑制して質の高い葡萄を作っています。除草剤も現在は使用していません。2014年ヴィンテージからすべてのアペラシオンにおいてビオロジックの認可(Agriculture Biologique)が下りています。

栽培されているのは、グルナッシュ種、シラー種、カリニャン種、サンソー種など多品種に渡ります。シラー種100%のレ オート テラス以外はグルナッシュ種主体になりますが、ヴィンテージによっては病気などの影響で収穫量が減少することもあるので使用される葡萄品種の割合は変動します。

グルナッシュは花振るいによる収穫量減が大きい為、当ドメーヌではオリーブの木を植えています。オリーブの木に実が成ると連動して葡萄の木にも実がなります。そしてオリーブは葡萄よりも先に花振るいを起こすので花振るいに機敏に対応する事が出来ます。

収穫は全て手摘みで葡萄が十分に熟してから行なわれ、醸造は品種ごと行なう伝統的な手法でコンクリートタンクで行われます。収穫量が少ない時は、クオリティを上げる為ではなく、クオリティを保つ為に葡萄の選別を厳しく行います。

『清潔だがワインがくつろげないステンレスタンクより、僅かながら外気に触れることでワインが穏やかになるコンクリートタンクを使う』という、ワインに対する優しさはパトリック氏の人柄そのもので、灼熱の太陽とミストラルが吹く大地でできたワインとは思えないほど、エレガントで深みがあります。

2009年からはグルナッシュ ブラン種やルーサンヌ種などの白葡萄品種の収穫も始め、生産量は多くありませんがヴァケラスでは珍しい白ワインの醸造にも挑戦しています。ヴァケラス全体での白ワインの生産量は僅か3%。当ドメーヌでは生産量の5%が白ワインです。

パトリック グラ氏
手摘み収穫される葡萄
除梗した葡萄をコンクリートタンクに移す作業

当主からのヴィンテージコメント
2016
フランス各地で霜の被害が出たが、ヴァケラスではミストラル(乾いた北風)が吹いたお陰で被害を免れる事が出来た。暑かった2015年よりさらに気温が高く葡萄もかなり良く成熟し、選別も必要ないほど健康だったので素晴らしいヴィンテージになる展望がある。2015年よりパワフルでタニックな飲み応えのある味わいになっている。
2015
春先は遅熟傾向で荒れた天候が続いたが、6月中旬から一気に回復して暑く乾燥した夏を迎えた。葡萄もどんどん成熟していき、収穫は2014年よりも早い9月2日に始まった。水不足によるストレスで生産量は多くないが、溢れ出るような果実味とエレガントさを兼ね備えたヴィンテージになっている。

IGP MÉDITERANÉELES HAUTES TERRASSES 
IGP メディテラネ レ オート テラス

品種:シラー100%

ヴァケラス産のシラー100%のワインです。シラー100%だと「ヴァケラス」と名乗れないワインになってしまいますが、ドメーヌの誇りと自信のワインの為あえてシラー100%で造ります。テラス(段々畑)はありませんが、今は亡き祖母が付けたキュヴェ名を今でも使用しています。

年間生産量は2,400~3,200本で、2011年の様にシラー種の出来が思わしくないヴィンテージは醸造しないこだわりです。

ローヌ川支流のウヴェーゼ川流域に位置する石灰質の礫岩が散らばる粘土石灰質土壌の畑に樹齢30年以上の葡萄が植えられています。コンクリートタンクでアルコール醗酵、一番軽いローストで仕上げた新樽率50%の600ℓの大樽で12~24ヵ月熟成させます。ヴァケラス ブランで使用した2~3年使用した樽も使います。瓶詰後は樽を消毒し洗い、次の年のワインを入れます。樽を空にはしておきません。オーダーメイドで当ドメーヌ用に樽を仕立ててくれた職人さんもいましたが、2年程使用してしっくりこなかったので変えたこともありました。

1995年に初めて醸造され、赤ワインでは当ドメーヌで唯一樽熟成を行っているキュヴェです。

シラー種特有のスパイシーな酸味、若いうちはタニックでとてもパワフルですが熟成するにつれて甘草のようなハーブ香が出てきて渋味も滑らかになりオイリーな旨味が溢れます。

典型的なシラーの香味が分かると同時に、シラーは冷涼感のあるワインという事も良くわかる1本です。

オート テラス用の600ℓの大樽

VACQUEYRAS LES GENESTES
ヴァケラス レ ジュネスト

品種:グルナッシュ50~60%、シラー40~50%、稀にムールヴェードルが数%

畑は石が散らばる粘土石灰質土壌でコンクリートタンクで醗酵及び熟成を行います。下記のシナチュールよりも常にシラーの割合が5~10%多く、収穫時期が遅めの樹齢の古い葡萄(最も古い木は90年以上)が使われる為に果物をかじったような豊かな果実味と凝縮感、若いうちはパワフル&タニックで肉料理が欲しくなるような濃厚な味わいですが、少し落ち着くと驚くほど深みのあるエレガントな印象に変わります。

樹齢50年以上のグルナッシュの木

VACQUEYRAS SIGNATURE
ヴァケラス シナチュール

品種:グルナッシュ55~75%、シラー25~35%、
時々カリニャン、ムールヴェードルも少量

基本的に上記ジュネストと同じ畑の葡萄を使用し醸造方法も同じコンクリートタンク醸造ですが、こちらの方が樹齢25~50年の若木がメインになるので比較的早いうちからバランス良くまとまって、しっかりとした果実味と渋味はありますが飲みやすい仕上がりになる傾向があります。

CÔTES DU RHÔNE MON
コート デュ ローヌ

品種:グルナッシュ60%、シラー30%、カリニャンまたはムールヴェードル10%

葡萄の樹齢は25~50年でコンクリートタンクで醗酵、熟成が行われ、他のキュヴェよりも熟成期間が短く早く瓶詰されるのでヴィンテージが1年先行します。低価格の割にはタンニン豊富で骨格がしっかりしており、スパイシーで飲み応えがあります。

IGP VAUCLUSE ROUGE SUZANNE
IGP ヴォークリューズ ルージュ スザンヌ

品種:グルナッシュ、シラー、カリニャン、メルロー、サンソー、カラドック

カラドック種とはグルナッシュ種とマルベック種を掛け合わせた品種で味はグルナッシュに近いですが葡萄の房が縦長で隙間が多く、さらに果皮が厚いので病気になりにくい品種です。

ローヌ川支流のウヴェーゼ川流域に位置する河川の沖積土からなる砂泥土質土壌の畑に植えられた葡萄を使用。葡萄の樹齢は約45年、コンクリートタンクで醗酵及び熟成が行われます。葡萄品種の割合によってキャラクターは変化しますが基本的にバランス良くフルーティで飲みやすいワインになります。キュヴェ名の「Suzanne(スザンヌ)」は前当主ジョスラン氏の母親の名前から付けられています。

VACQUEYRAS BLANC
ヴァケラス ブラン

品種:グルナッシュ ブラン50~55%、ルーサンヌ20~50%、ヴィオニエ2%、
クレレット種0~25%

黒葡萄を植え替える際に白葡萄を実験的に植え、2009年に初めて瓶詰されたキュヴェ。ヴァケラスのアペラシオンは全体の生産量の97%が赤ワインになるので白ワインは非常に稀です。

一番軽いローストで仕上げた600ℓの大樽で醸造し1年間熟成を行います。2~3年使用したらオート テラスの熟成用の古樽として使用します。瓶詰後は樽を消毒し洗い、次の年のワインを入れます。樽を空にはしておきません。オーダーメイドで当ドメーヌ用に樽を仕立ててくれた職人さんもいましたが、2年程使用してしっくりこなかったので変えたこともありました。

マロラクティック醗酵は自然にまかせているので起きないヴィンテージ(2012、2014年)もあります。南国フルーツのアロマ、香りからは甘い印象を受けますが酸味がしっかりしているので後味はスッキリ、バランス良く飲みやすい白ワインです。

IGP VAUCLUSE BLANC SUZANNE
IGP ヴォークリューズ ブラン スザンヌ

品種:ルーサンヌ30~50%、ヴェルマンティーノ40~50%、ヴィオニエ10~20%

パトリック氏がヴェルマンティーノ種100%のワインを飲む機会があり、とても美味しかったので自分の畑にもヴェルマンティーノ種を植えてみたという遊び心から造られたワインで2013年が初醸造。100%タンク熟成。ルーサンヌのまろやかさ、ヴェルメンティーノのフレッシュな酸、ヴィオニエのスパイシーさが特徴的。柑橘系の爽やかな香りが豊かでフレッシュな酸味と果実味、アルコール感もあまり感じさせないステンレスタンク醸造らしい軽やかな味わい。